建築や建設中の現場でよく見かける足場は屋根塗装の際にも使用されます。屋根塗装を考え、見積もりを取って足場設置にかかる費用を見た方の中には「塗装って足場を組まずにはできないもの？」と疑問をもった方がいるかもしれません。そこで、今回は屋根塗装に足場が必要な理由や、無足場工法といわれる新しい工法について解説します。
屋根塗装に足場が必要な理由
屋根塗装は、家の頂上にある屋根に登って塗装するものです。高所作業であることから作業員の安全と安定した作業場のために足場は必要です。
足場とは
足場とは建設・建築現場などにおいて、高所作業に従事する作業者が作業箇所に近づいて作業できるように設置する仮設の作業床（高さ2m以上の場所で作業する際に必要な床。幅40cm以上が必要）およびこれを支持するもののことを指します。
作業員の安全確保のため
厚生労働省の定める規則では、作業する人の安全確保のために2m以上の高所作業の際は、十分な広さと強度がある安全な足場を設置する必要があると定められています。建物が2階建ての場合通常屋根は6〜8mの高さになるため、足場を設置せずに屋根塗装をするのは規則違反になる可能性があるのです。
屋根塗装は高所作業の上、勾配もあるためそれだけでも滑落の危険性があります。加えて重い塗料の入った缶を片手に持ったまま作業することが多く、バランスをとるのも大変な作業です。足場があればもし足が滑ったとしても手でつかめる柱や落下防止のメッシュシートがありますが、足場なしの場合これらがない状態で作業しなければなりません。
近所とのトラブル防止のため
足場なしで塗装する場合、近所の家とトラブルになる可能性があります。屋根塗装前には汚れを取るために高圧洗浄しますが、その際に大量の汚れた水が出てしまうのです。また塗装中も塗料が飛ぶことがあり、水沫や塗料が近所の家に飛ぶのを防ぐためには足場を組んで飛散防止シートを貼る必要があります。足場を設置しない場合は飛散防止シートを貼ることがないため、近隣の家に迷惑をかける可能性が高くなります。
品質を落とさないため
足場なしで塗装すると品質は低下すると思っておきましょう。足場なしで作業する場合、体が不安定のため、とくに端の部分の作業がしにくくなり場合によっては雨漏りなどの不具合が起きる可能性があります。足場が安定していれば姿勢も安定し、道具もすぐ横に置けるため効率的に作業できるでしょう。また、足場なしの場合高所で傾斜もあり不安定な屋根上では、落ちないように気をつかうことで手元の作業に集中できないことも考えられます。
足場なしで屋根塗装は可能？
足場を組まず安全に屋根塗装をする方法もあります。どのような方法があるのか解説します。
足場を設置せずに屋根塗装する方法
「無足場工法」という足場を組まずに塗装などをする方法があります。1つはゴンドラで、吊り下げたケージの中に作業員が入って、上下左右に移動しながら作業するものです。安全性も高く、安定した場所で作業できます。歩行者が多い場所でも地上に設置する必要がないため都心部のビルで採用されることが多い方式です。コストがかかること、場所によって設置できないことがデメリットです。
2つめの高所作業車は、大型車両に作業床が装備されている特別な車になります。デメリットは許可証やオペレーターなど大がかりな準備が必要になることです。3つめのロープアクセスは、作業員が産業用ロープを通したフルハーネスを装着して上から吊られた状態で作業する方法です。宙づりのため危険に見えますが、安全性が高く、足場を組む手間や時間がかからないこと、大きな機材や設備が不要であるといったメリットがあり、コストダウンにもなります。
無足場工法のメリット
無足場工法は、となりの家との距離が近い、隣家の敷地が借りられないというような足場を設置するスペースがない場所でも対応できることなどのメリットが挙げられます。ほかにも、足場の設置および解体が不要でコストダウンおよび工期の短縮が可能であること、足場からの侵入などを心配しなくてよくなるため防犯の面で安心なことなどもメリットです。さらに、足場やメッシュシートによって窓をふせぐことがないこと、足場の組み立てる音や作業員の移動による音が発生せず静かなことなど、さまざまなメリットがあります。
無足場工法のデメリット
無足場工法にはメリットばかりではありません。作業範囲が限定的な無足場工法は、屋上にロープやゴンドラの設置が難しい場合対応できません。作業範囲が広範囲な場合は足場を組んだ方が効率的な作業ができます。ほかに、無足場工法の場合原則作業員しか立ち入れないため、完成するまで依頼者が目で見て確認できないことや、対応可能な業者がまだ少ないといったデメリットがあります。
足場なしでも塗装できる屋根
足場がなくても塗装が可能な屋根は、陸屋根といわれる平坦な屋根や屋上、三角でない工場の屋根、高さが2m未満の場合、梯子や脚立が使える屋根です。
まとめ
屋根塗装は屋根という高所かつ傾斜がある場所で重い塗料を持っておこなう作業であることから何よりも作業員の安全を第一に考える必要があります。無足場工法が可能な場合を除いては品質保持・近隣への影響の面からも足場を組んで作業してもらいましょう。
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